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記憶に残る20分間のショータイム

 試合終了後、大勢の記者たちに囲まれた桜丘⑦富永啓生選手の頬を、悔し涙がつたった。

「前半は自分たちのペースで、自分のシュートも入って良い形で終われたのですが、後半の出だしで相手のゾーンプレスにはまって、自分たちの思うようなプレーができずに点差が開いてしまいました。それが負けにつながったと思います」

 福岡第一との準決勝、最終スコアは72-103。前半こそ2点リードで終えたが、後半からエンジンのかかった福岡第一を止められず、100点ゲームで敗れ散る形となった。

 富永選手自身は37得点。ほかの選手ならば “大量得点” と言えるが、こと富永に関していえば、もはや驚く数字ではないだろう。「目標は平均45得点」と公言し、40点超えも珍しくないその圧倒的なスコアリング能力は、ここまでの4試合で誰もが認めるところだからだ。

 ただ、この数字以上に、福岡第一戦で富永選手が残したインパクトは大きかった。特に前半は、福岡第一のディフェンスマン⑩古橋正義選手の徹底マークを振り切り、3Pラインのはるか後ろから柔らかなシュートを放って次々とネットを揺らした。

 結局、前半を終えて3Pシュート7本を含む31得点。まさに20分間の “ショータイム” といえる富永の得点劇に、会場中が度肝を抜かれた。これには敵将・福岡第一の井手口孝コーチでさえ、試合後「前半で30点取られましたから、60点取られるんじゃないかと思いました」と苦笑いしていたほどだ。

 試合前、桜丘の江﨑悟コーチは富永に「今日はジェームズ・ハーデン(ロケッツ)になれ」と告げたという。それは福岡第一と走り合いになっては分が悪いと見て、よりドリブルでテンポをコントロールしながら得点しようという意図から。前の準々決勝(vs 実践学園)では素早いトランジションゲームの中で点数を稼いだが(開始7分で19得点!)、それとはまた別のスタイルで得点することを求めたのだ。

 その指示どおり、前半の富永選手は相手のペースにのまれることなく、自分のリズムでシュートを放って得点を重ねた。そこに、⑧藤田龍之介選手の3Pシュートや⑩セン マム リバス選手のゴール下シュートが続いてリズムをつかんだ桜丘。しかし、福岡第一はそれ以上にうわてだった。後半、オールコートプレスで相手のミスから鮮やかな速攻を繰り出し、力技で自分たちのペースに持ち込んで、真骨頂を発揮した。

 こうして桜丘は決勝進出の道を絶たれた。だが、ベスト4に入ったことにより、明日は高校バスケのラストゲームとして3位決定戦が残っている。“ショータイム” が見られるのも、あと1試合。負けから開き直ったスコアリングマシーンの、最後の爆発に期待したい。

 

 

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